TESHIMA
2012年の冬からしばしば瀬戸内海に浮かぶ豊島に通い島民のポートレートを撮影しています。部外者の僕が豊島に入り込むのは難しい部分もあるのですが、親切な島民の方々に協力してもらいながら撮影を続けています。
写真を撮るという行為は、ただ単にイメージを作り上げるだけではなく、関係性を構築する行為でもあると考えています。僕は、カメラを挟んで向き合うことで、豊島の人々と対話を試みました。もちろん写真からは、彼ら彼女らが何を想い、考えているのかは分かりません。けれども、写真に写っている顔の表情、服装、背景などから、本当の豊島が、隠しきれない豊島の現実が滲みでていると思われてなりません。
豊島は高度経済成長期に中央から取り残され、大きな公害事件を経て、21世紀に入ってからは超高齢化が進み、人口の減少もまた顕著となっています。このことは、なにか日本の地方の近い将来の縮図を示しているのではないかと感じます。その一方で、島には電気自動車が走り、芸術祭を目的とした多くの観光客が訪れるようになっています。失われるものも多いが、新しいものも確かに誕生している…。豊島は今、大きな過渡期を迎えているのだろうと思われます。そして、その変化が如実に現れるのは、豊島で実際に生活し、活動する人々の姿ではないでしょうか。これからもじっくりと時間をかけて、豊島を観察し、写真を撮る行為を通して対話して行きたいと考えています。